株式会社ブイクック代表、工藤柊さんの他己紹介。「Hello Vegan!な社会をつくる」起業家の”歯車思想”と、死後の未来も今の課題。

再生ボタン Shu Kudou

工藤柊さんについて

工藤さんは、ヴィーガンに特化した事業活動をする株式会社ブイクックの代表です。なので「ヴィーガンのサービスをしている人」というイメージが大半かと思います。しかし話を伺うと「ヴィーガンの事業はやるべきことのひとつ」そう考えている工藤さんという人がみえてきます。社会という外側に対しては「社会課題と向き合い続ける人」、その社会課題とは”自分が生きやすい世界との差分”なんだと知りました。そして外があれば内もある、内なる工藤さんは「人格を磨くのが好きな人」ということがみえてきたことで、日々の発言の根が垣間見えました。これから10年20年30年...と続いていく取り組みは、外も内も境界なく「”工藤柊の”理想へ近づく」ことなのかもしれないと感じています。まずは起業家という第一章の工藤柊さんのある日の記録です。

これまでの歩み

「日本のような先進国の経済活動によって、いわゆる途上国がしわ寄せを受けていることが嫌だった」そう思っていた当時高校3年の工藤さんに、人生の転機になる出来事が訪れます、ぺちゃんこになるまで轢かれた猫の亡骸と出会ったことでした。繰り返し踏みつけられる亡骸をみて、人々の無神経さに憤りのようなものを抱えた工藤さん、犬や猫の事故数や殺処分数を調べ、その先に畜産動物の屠殺数の現実を知ります。不条理は人と人の間だけではなく、人と動物の間にもあることを知ると同時に、無知な自分がそのサイクルに貢献していたことに絶望したそうです。そして、ヴィーガンという選択をします。2018年には大学を休学しNPO法人日本ヴィーガンコミュニティを設立し活動、その過程で資金があればもっとヴィーガンの仕事を増やしたり、ヴィーガンの選択のむずかしさを改善することができると教訓を得て、2020年4月に株式会社ブイクックを設立し、資金調達をして事業を進めることに。ヴィーガンレシピ投稿サイト「ブイクック」はじめ、2022年秋ヴィーガン商品専門のネットスーパー「ブイクックスーパー」をリリースし、ヴィーガンを選択しやすい社会づくりに時間を注がれています。

Shu Kudou タイムカプセル

  • まだできること少ないから

    自分ができることに集中しようと

「最近気になったニュースは?」という問いに、ロシアのウクライナ侵攻を挙げられたときの回答です。23歳の工藤さんにとってリアルタイムでの戦争ははじめて、それに対する話が印象的でした。戦争のはじまり方や、関心が薄れていく自分を感じたりする中で、社会課題に関心が高い工藤さんはどう思うのかを聞いてみたら「あまり考えてないかも、全部気にしててもまだできること少ないから、自分ができることに集中しようと」と。とても現実的な答えが返ってきたことが意外でした、憤りのようなことを感じてると想像していたので(私のバイアスを反省をしました)。その言葉から、ビジョンを持ちながらも自分の影響範囲を捉える冷静さが印象に残りました。おもいっきり背伸びをする発言や行動で急成長する起業家がいるのも事実な一方で、工藤さんは実直でオープンな姿勢によって、サポートを受けながら強い根を張るような成長のイメージです。まずは強い根を張る、そんな意志を感じると、わたしにも生き方を問うてくるのです。(この写真は、工藤さんとCOOの吉川さんが、はじめてのヴィーガン商品あつめたポップアップの前日、都内の出品協力店舗さんへまわり、商品を預かり有楽町のマルイ会場まで運ぶところ、このクーラーボックス想像の10倍重いです。そのニュアンス動画でご確認ください、裏では身体も張っております。)
  • 憧れはイーロン・マスクではなく

    ムハマド・ユヌス

    一番は賀川豊彦

社会起業家とカテゴライズされることについて聞いてみたら、大きな学びをいただきました、「社会起業家とは定義が曖昧だけど、事業内容ではなくパーソナリティだとおもってる」と。そういう意味で自分自身はスタートアップよりも社会起業家としてのアイデンティティが強いとも。それを裏付けるエピソードが憧れの2人の名前でした。マイクロファイナンスの草分け的存在のグラミン銀行創設者のムハマド・ユヌス氏や、日本の労働運動、農民運動、普通選挙運動、生活協同組合運動など社会運動の先頭にたった賀川豊彦氏、この2人を知ることは工藤さんの思想の扉をあけることにつながると感じました。そしてブイクック社のようにベンチャーキャピタルから資金調達をするモデルのスタートアップでありながら、(短期的な利益ではなく)長期的な社会課題に焦点を充てている企業が存在する背景には、資金というパワーを提供する意志があることを、工藤さんを通じて可視化されているのだと感じています。(この写真は、有楽町マルイでのポップアップ会場、この企画はブイクック社の出資者でもあるtalikiファンドが企画したもの、社会課題を焦点にしたtalikiファンドをはじめ、表からは見えないだけでブイクックを支えるつながりを想像すると、美しいと思うのです。)
  • 社会を前に進める

    プレイヤーとして生きて

    人の背中も押す存在

”工藤柊”個人として人生をどう使うのかは言語化されてますか?という問いに対して、間もなく返答があったとき、日々の思考量の多さを感じた瞬間でした。工藤さんと話をしていると「全体の一部」という前提を持たれていることが伝わってきます。その象徴的なエピソードが「歯車という言葉が好き」という話でした。全体にとって自分がどんな歯車になるのがよいのか、そのキーとなる歯車になりたいと。その考え方は、日々生きている中で孤立を感じたときの処方箋のようでもあり、謙虚さを思い出させてくれるきっかけにもなると感じました。マンガからも人生を学ぶ工藤さんは「全員がナルトになる必要はないと思う、ナルトは出会ったすべての人でできてるから」と。スポットライトは一人にあたったとしても、あなたも歯車としてどこかでつながっていると。(この写真は、接客中の工藤さん、接客しててもテンションがあがるわけでもなくいつものトーン、社内で「感情あったんだ」と言われたエピソードに納得感をもってしまうのがこういうところです笑)
  • 精神衛生は人生で一番よい

    4〜5歳と同じくらい

何者かになろうという焦燥感を持ったことは?という問いから、今の精神衛生がよいという話へと流れました。「僕の前提は生きているだけだと世の中にマイナスを与えている気持ちが強い」と、なので今は能動的に取り組む状態に在ることで、生きることがプラスだと思えている、というのが印象的でした。これを受けて、小中高生のときの違和感だったり怒りのような、自分では消化しきれない感情の塊を思い出しました。それをひとりで抱え続けるのは辛いものですが、それが外側の世界へプラスの形でつながることで溶けていくものだよ、というメッセージにも聞こえていました。20代前半でお兄さんのような工藤さんの活動をお伝えすることで、自分では手に負えない塊の溶かし方のヒントになったらと感じています。(この写真は、レシピを見ずに感覚でほうれん草カレーをつくる工藤さん、台所は実験室のような雰囲気でした、とても美味しゅうございました!)
  • 終わるならそれが理想

    でも終わらないから

    未来に要らないことはしたくない

1ヶ月後地球がなくなるとしたらなにをする?という問いに「田舎にいって今のパートナーとのんびり暮らす、お世話になった人たちと話してお礼をつたえる」と、その後で付け加えた「でも終わらないから....」という流れが印象的でした。工藤さんは”死”を意識する発言が多くあります、そこにはネガティブなトーンはありません「次の世代の人たちに対して、残せるものはちゃんと残したい、その人たちが困るようなことはしたくない」と、自分が終わった先を想像しながら淡々と答える姿に「でも終わらないのだから、あなたはどうする?」という問いを投げかけられたのです。(この写真は、ヴィーガンのレシピ本です、どうやら工藤さんのご実家に在庫がたくさんあるそうですので、ヴィーガン料理ご興味ある方に簡単レシピおすすめです、想像より満足感あって美味しいですよ。)
  • 目指すものが同じだけの人とは

    今は一緒に仕事はできないと学んだ

病むことは?という問いから、とても現実的な学びを共有いただきました。自分が関わった人がつらい状況になると落ちることもあると。話を聞いていくと採用や組織についての話になりました。ビジョンが同じでも登り方が違う人と仕事をすると、全員が不幸になるという経験をされたそうです。印象的だったのは「一緒に仕事をしなければ友だちになれたかもしれない人」という補足でした。仕事という接点だけで相手を捉えないこの発言に、工藤さんの人柄があらわれているような気がしたのです。360度たくさんの側面をもつ人、仕事という接点でなく、友だちという接点だったら...と、違う可能性を見つけながら教訓を得る姿勢に「すべて肯定」という思考のスタートラインを持たれてるように感じました。※この教訓を得たことで、できなくなったことを話されていますので動画をご覧ください。(この写真は、工藤さんを紹介してくれた株式会社ALMAの斎藤さん、COOの夕葉さんと一緒に食卓を囲んだとき、斎藤さん曰く「弟力がすごい」という評はなるほどとおもいました、学びに貪欲で謙虚な工藤さんを弟のように感じてついサポートしてしまうと、わかります笑)
  • 社会をよくしようとする

    意志を残したい

未来にひとつだけ残せるなら?という問いへの答えです。工藤さんの意志を残す活動はすでにはじまっています「そうは言っても工藤さん」(https://kudoshu07.com/)というブログ、これは2017年11月1日から今日にいたるまで不定期に更新されています。この活動は、特定の目的をもった行動ではないように感じています、自分の気づきをアーカイブで残す行為自体が、「意志を残したい」というメッセージなのだと感じるのです。ここに数字目標がないことは、そもそも数字が意味をもたない(測れない)行動の大切さを教えてくれてるような気持ちになります。目的が「意志を残したい」なら、数値評価される事業であれ、だれも見ていないような日常のゴミ拾いであれ、その行動は等価である、そんな風に聞こえていました。あなたが未来にひとつだけ残したいものはなんですか、その目的に沿って暮らしていますか?そう問いが跳ね返ってきたのでした。(この写真は、工藤さんが高校生のころの日記を読んでるところを眺めていて、過去の自分と向き合うとどんな人でも嘘はつけないのかもしれない、そんなことが頭をよぎりました。)

Memories

  • Memories
  • Memories
  • Memories
  • Memories
  • Memories
  • Memories
  • Memories
  • Memories
  • Memories

About Business

About Business

「Hello Vegan!な社会をつくる」をミッションに、誰もがヴィーガンを簡単に始められ、楽しく続けられる社会をつくる企業です。日本ではヴィーガン生活のハードルは高い現状があります、一方ヴィーガンが生活しやすい国のひとつにオランダが挙げられます、30年後には人口の過半数がベジタリアンになる予測もあり、Z世代やミレニアム世代のヴィーガン率が高いそう。日本でもヴィーガンやフレキシタリアンという言葉の広がりとともに選択したい人は増えてきている肌感がありますが、課題は買いたい商品がスーパーになかったり、外食、旅行、友人やパートナー関係などの日常自体が難しい現状があります。その課題を感じてきた当事者たちがブイクックというチームでもあります。工藤さんにとっての「Hello Vegan!な社会」とは、「「ヴィーガンだから」と諦めることなく、孤独や生きづらさを感じずに暮らせる社会です。他者を思って行動できる優しい人たちが涙を流さず、報われる環境を必ずつくります。」と。

From: タイムカプセル

私たちからみた、工藤柊さんという人

「工藤さんは苦しくない」変な表現ですが、率直な気持ちでもあります。過去のわたしは、NPOや社会起業家という言葉がまとう空気が得意ではありませんでした。自己犠牲的なニュアンスを感じて、なんだか苦しくなってしまっていたのです。それを覆してくれたひとりが工藤さんです。彼の言葉には嘘がないと思えるのです、苦しければ苦しいと、楽しければ楽しいと、それを我慢したり隠したりしないと思える。その向き合い方が心地よい理由だったんだと感じます。同時に自分の在り方を学びました、苦しいと感じてしまうのは、自分がなにかを抑えていたのが原因なんだと。そんな風に、正直さを引き出す周波数をもった人だと感じています。この対話を通して、社会起業家という言葉は意志表明と感じました、社会課題を任せっきりにするのではなく、なにが貢献できるのかという問いをもちながら、これからも記録を続けていきたいと思います。

■Special Thanks
斎藤 孝俊さん(株式会社ALMA CEO)
ヴィーガンハウスのみなさん
  • 編集部
  • 映像・文章 タカマツ ヒロミ / 写真 タカナシ ダイスケ