「ミューラル」とよばれる壁絵に影響を受けた青年は、日本にパブリックアートを広げるために起業家に。川添孝信さんの他己紹介。

再生ボタン Takafumi Kawazoe

川添孝信さんについて

川添さんは、ミューラルとよばれる壁絵(※以下ミューラル)を軸にサービス展開をしているスタートアップ企業の代表です。多感な10代の時期にヒップホップに出会い、それを取り巻くカルチャーとしてのミューラルやストリートアートにも惹かれていったそうです。趣味として追いかけ続けていた青年時代を経て、30代で起業しミューラルと共に人生を歩まれています。同社では、アーティストが経済的にも持続可能な形で創作活動ができるよう、そして企業にとっては新しい顧客とのコミュニケーション方法に、共創機会を創出しています。アートとビジネスの掛け合わせの是非がある中でのチャレンジは、日本のパブリックアート史に変化が起きるかもしれません、こそにはWALL SHARE社がいる、そう私たちは感じています。

これまでの歩み

川添さんのこれまでは、体育系の大学を卒業後、外資系自動車ディーラー ・フォルクスワーゲンに就職し、全国セールス販売賞を3度受賞されるご活躍された後、IT業界へと転身。株式会社クラウドワークス社へ入社し、スタートアップ業界に出会うことになります。そして2020年にWALL SHARE株式会社を創業し、自身のアイデンティティの根幹でもあったミューラルを日本に広げることを事業化されました。彼は「僕たちにとってのアートは、富裕層や感度が高い方だけが楽しむものではなく子どもから大人まで、誰もが気軽に楽しめることが重要だと思う」と。父親でもある川添さんが、子どもの未来にはこうあって欲しい、その願いを実現する活動をされているようにも感じます。ストリート×未来×子どものキーワードで、新たな視点を与えてくれる川添さんの今後も追っていきたいと思います。

Takafumi Kawazoe タイムカプセル

  • 日本中を

    ミューラルアートで

    彩ってます

「何をしてる人ですか?」と質問したとき、活字では伝わらない「間」を動画でご覧いただきたいです。起業家は瞬発的に答える能力に長けてる方が多い中、川添さんのユニーク性はオンオフを感じさせない自然な間を持たれていることだと感じます。相手に緊張感を与えないのですが、ブレない信念も感じさせますし、なにより根幹以外は柔軟である姿勢を目の前にすると、私の中にあるその姿勢を引き出す、そんなチューニングをされる感覚になるのです。<mural by DOPPEL(BAKIBAKI&MON)>
(この写真は、淀川沿いにあるミューラル、岡本太郎に影響を受けてきた身としてはたまりません。電車から外をみていると岡本太郎の強い視線が飛び込んできます。西中島南方駅を降り歩いていくと、次第に描いたアーティストの存在感が増してきました。見た人に何かしらの感情を引き起こしてしまう巨大なミューラルを目の前に、私はエネルギーをもらったのでした)
  • 子どもから

    大人まで楽しめる

    アートの最高峰

「ミューラルとは?」の質問に対する言葉です。制作過程のミューラルの前では、足を止めてアーティストに話しかける方や、自転車に乗って速度を落として通過する人は一人や二人ではありません。川添さん曰く「特に子どもとご年配の方が興味をもってくれるのが面白い」と。それを受けて、スマホの世界にとらわれてない?そう問われた気がしました。本当は街中に好奇心をくすぐるものは沢山あって、それを見出すかは自分次第、そう子どもとご年配の方が教えてくれてるような気がします。スマホを置いて散歩に出かけてみる、そんな日をつくりたいと感じさせてくれるエピソードでした。
(この写真は、ヨドコウ桜スタジアムでの制作現場、背中にある青い絵は実はミューラルではなくて、なにも描かれていない壁に、プロジェクターで完成図を投影して、このガイドに沿ってスプレーで描き始めるのです。なにもなかった壁にアーティストが想像する新しい世界が浮き出るプロセスは、現場の静けさと反対に、心はワクワクしてくるのです)
  • 渋谷区は落書きを消す費用に3億円

    ニューヨークは

    パブリックアート増やすために27億円

「最近気になったニュースは?」の質問の回答です。川添さんは、この件について個人的な意見は述べませんでした、その姿勢から私は問いを投げかけられた気がしました。ひとつの意見に促す態度ではなく委ねるような姿勢から、何が正しいのかよりも、自分の感覚や意見をもつこと、そのきかっけを与えてくれるような答え方が印象でした。まさにパブリックアートもそういう存在なんだと感じました。「ミューラルの見方に正解はないんです、アーティストがどんな意図で描いたのか気にしなくてよくて、自分が感じるままでいいと思うんです」と川添さんは添えてくれました。<mural by BAKIBAKI>
(この写真は、アーティストBAKIBAKIさんが発起人としてスタートしたYODOKABEプロジェクト、淀川にあるナイチンゲールをモチーフにした作品。コロナが広がる渦中に懸命に従事してくださる医療従事者の方々へむけたミューラル、街中にドーーーンと現れます。取材を終え近所の居酒屋に行ったとき、女将さんにガストの看板の壁絵知ってますか?から話が盛り上がりました。街中にあるミューラルをきっかけに地元の人と仲良くなってしまう、まさに魔法でもありました)
  • 起業家とアーティストを

    一緒にするのは畏れ多い

起業家もアーティストと言われるような最近について、川添さんにどうしても聞いてみたかったことでした。「まだ言語化できてないのですが...」と付け加えられていました。取材中アーティストの方にも伺ってみましたら「もしかしたら現場感(リアル)じゃないですかね、直接会ってグッと進むので...」と。別日川添さんと食事をしているときに「(あるアーティストの方は)その場にエネルギーを残す意識で描いてるので、どんなエネルギーを放つか責任のような意識もを持たれてる....」という文脈がありました。そんな話をつないでいくと、手触り感という言葉が思い浮かびました。イヤホンで聴く音楽とライブの違い、Instagramで見るミューラルとリアルで対峙したとき、同じだけど同じではない、それは確かな違いです。言語化できないこと、そういうことを大切にしたいと感じました。
(この写真は、YODOKABEプロジェクトのひとつ岡本太郎氏をモチーフにしたミューラル制作の現場に伺ったときのひとこま、建設現場なのか?!というくらい足場を組んでマンションの壁一面に描いていくプロセスは緻密そのもの。実は、この壁となるマンション名に”岡本”がついてるミラクルエピソードがありました。あと好きなお話が、このマンションの住人の方が人を招くとき「岡本太郎」のマンション、と伝えるそう、最高だなーと)
  • 自分たちが消えたら

    関わったアーティストが

    マイナスになる

「プレッシャーは?」という問いに、”ある”と答えた川添さん。印象的だったのは、自分の存在が影響する他者の視点から捉えてることでした。文字だけでみると、メディア用の模範解答に見えそうですが、文字通り本当に思っていることだと、今まで川添さんと接してきて感じることです。このエピソードから、日常の些細なことも同じだなと教えてもらいました。もし自分が機嫌が悪かったら....?人をジャッジしていたら?と。自分が存在しているということは、存在させてくれている他者が必ずいます。自分が影響する人を想像すること、その範囲を広げることの大切さを思い出す言葉でした。
(この写真は、川添さんと幼馴染でありWALL SHAREで活動されてる久永さん、身体のサイズが大人ですが、二人が話してる会話はミューラル好きのキッズそのものでした、本当に好きなのが伝わってきて、この世界観はこの人たちにしかできないなと、改めて感じたのです)
  • 子どものために生きてる人

動画の冒頭「自分とは?」の問いが、ご本人として一番印象的な質問だったそうです「本当に自分とはなんなんだろうと」。別の質問で「誰といるときの自分が好きか?」の問いに対して”子ども”と答える場面も、川添さんと話をしていると、子どもの存在が大きいことを感じます。自分で愛が溢れてる感覚があるそうでそれは説明不能だとも、そんな子どもは相棒的な存在とも。そんな話を聞いていると、子どもは未来の象徴なんだと感じました、未来という曖昧な言葉から、身体のある子どもを目の前にすると、この子たちは10年後も80年後生きているんだと、未来に現実味を与えてくれる存在なのだと、はじめて分かった気がします。今の選択に迷うことがあったら、近所や友人の子どもたちが、どんな日常であってほしいか?ひとつの道標にしようと気づかせてくれました。
(この写真は、川添さんと息子さん(左)の個展にて。3歳児がキャンバスと絵具を手にしたら「もんすたーみー」がこの世に生まれたそうです。きれいに描こうとしてなかったり、誰に評価されようともしていない圧倒的な自由さは、私になにかを伝えてきました、3歳画伯に感謝)
  • 未来にひとつだけ残せるなら

    WALL SHAREという存在

これを聞いて、川添さんは今すでに幸せなんだなと感じてしまいました。もちろん、思うようにいかないことも沢山あると思いますが、カンジーが残した言葉を思い出したのです。”幸福とは、考えること、言うこと、することが調和してる状態”そんなニュアンスの言葉です。別の回答で「魂が燃えることをしていたい」とおっしゃっていて、まさに川添さんにとっては、WALL SHAREそのものなんだろうなと。それを聞いて、嬉しくもあり、羨ましくもあり、改めて応援したい気持ちと、50年後日本のミューラル史を見たらそこにはWALL SHAREがいるなと思いましたし、同時に自分自身も50年後、100年後....も自信をもって残したいと思える活動をしようと思い出させてくれました。<mural by COOK>
(この写真は、川添さん撮影のもの。本当に子どもはよく立ち止まるそうで、それに加えたエピソードが興味深いのです。親御さんは子どもの手を引いて先行くのを促すそうです、時間に追われる現代を象徴するこの現象を可視化してしまうパブリックアートのすごさを感じました)

Episode02 川添孝信(WALL SHARE Inc.)Mural Art in Osaka

  • Episode02 川添孝信(WALL SHARE Inc.)Mural Art in Osaka
  • Episode02 川添孝信(WALL SHARE Inc.)Mural Art in Osaka
  • Episode02 川添孝信(WALL SHARE Inc.)Mural Art in Osaka
  • Episode02 川添孝信(WALL SHARE Inc.)Mural Art in Osaka
  • Episode02 川添孝信(WALL SHARE Inc.)Mural Art in Osaka
  • Episode02 川添孝信(WALL SHARE Inc.)Mural Art in Osaka
  • Episode02 川添孝信(WALL SHARE Inc.)Mural Art in Osaka
  • Episode02 川添孝信(WALL SHARE Inc.)Mural Art in Osaka
  • Episode02 川添孝信(WALL SHARE Inc.)Mural Art in Osaka

About Business

About Business

「人とアートを繋ぐきっかけを圧倒的につくる会社になる」を掲げ、ミューラルというパブリックアートの可能性を探求するWALL SHARE社。日本に生まれ育った私たちにとってアートの敷居は低くはありません。「難しそう、高そう」というイメージが先行し、一部の人のための嗜好品のようになっているのが現状です。そんな日本で、街の美術館を巡るような体験が日本中のあちこちで生まれる、そんなアートが身近な世界観を描かれています。その中には、アーティストの創造性を守りながら、新たな活躍の場を創出し経済的に安定する環境をつくることも含まれています。これまでの広告と大きな違いは、依頼主はお金を出せばミューラルを描いてもらえるという従来の広告モデルではありません、パブリックアートの意義や、アーティストの創造性へのリスペクトなど、その価値観を共有できる企業との「共創」にこだわりを持たれています。その結果、誰もが知るような企業との共創が生まれ続けているそうで、資本力のある大手企業が、公共性の精神をもってミューラルを活かしていく流れが加速した2022年だったそうです。まずは都市部から順々に同社が関わるミューラルが出現します、詳細はSNSで随時公開中です。

From: タイムカプセル

私たちからみた、川添孝信さんという人

SNSでDMから出会いました。大阪から東京来られるタイミングで会ったのが最初で、たしか2019年頃。海外のミューラルの話で盛り上がったときに、心から好きなんだと伝わってきました。当時はその気持ちを事業化するには、ある悩みを抱えてらっしゃいました。

そこから数ヶ月かが経ち、別人になっていて驚きました。ミューラル好きからミューラルのカルチャーを担う人へと変容していました。今では名だたる大手企業とのタイアップ実績が積み上がりはじめ、アーティストのみなさんと活躍されています。

WALL SHARE社が、ここまでアーティストに信頼されているのなぜか?これはWALL SHAREにとって重要なことです、ビジネスモデルがいかに優れているか、いかに儲かるかのようなビジネスの話ではなく、アーティストと人と人として信頼しあえているかが無い限り成立しません(アート×ビジネスが流行ってるからといってできるビジネスモデルではないのです)。川添さんがアーティストの方々へのリスペクトの精神を持ち続けていること、言葉に嘘が混じっていないこと、飾らないこと、そういった「人」としての積み重ねの歴史が、信頼という見えない資産が、事業に影響をもたらしてるのだろうと感じています。

私たちは彼経由でミューラルを知ることができて幸運でした、もし違う観点でミューラルを知ったら、落書きの延長に思ったかもしれないし、アート文脈で投資の話になったり、小難しい解釈をしていたかもしれないけど、彼の視点は自分の日常と関係あるものだと感じさせてくれました、とても感謝しています。

もし、ミューラルの必要性を問われたら「シンプルにミューラルがまち中にあったほうが楽しくないですか?」それくらいの純粋さをベース、日本中にミューラルが増えていくプロセスをこれからも追っていきたいと思います。
  • 編集部
  • 映像・文章 タカマツ ヒロミ / 写真 タカナシ ダイスケ